北原白秋先生も信時潔先生も共に、こよなく日本人を愛し、大和民族の優秀性
　を誇りに思い、日本の国土を懐かしんで居られた。北原先生が亡くなられる直前に、
　前述の心境を神話を通して此の世に書き残して置きたかった気持ちは痛い程わかる
　のである。
　たまたま二千六百年記念行事の一つとして発表された海道東征を信時潔先生が共感
　を持って作曲され、そして偶然私が初演の指揮をしたのであった。
　此度の北混定演に久し振りに海道東征の全曲を演奏することは、私にとって感無量
　と言わざるを得ない。
　作詞者並びに作曲者は共に今はすでに亡く、初演当時の生き残り演奏者は極めて
　僅かになってしまった今、その一人の私が此の曲の真意を自ら演奏を通して会場の
　諸賢にお伝えする機会を得たことを無上の光栄に喜ばしく思うものであります。
　大和の国発祥の地として言い伝えられ、岡田の宮の存続する北九州の地で演奏する
　ことは、誠に有意義であり、特別の感慨を持つのであります。