少年王者の歌 てんまつ記
それは、２００４年１２月５日、友人Ｋさんの「少年王者の歌、知ってる？」
の一言で始まった。
「大密林に とどろくは 少年王者の叫び声」でしょう、と私。
Ｋさんは、「え？、知っているの？」
「少年王者」という言葉が、私の脳の中の深い所に凍って眠っていた記憶を開く
パスワードだった。もう、５０年も前の昔の記憶情報が鮮明に私の脳内のハード
ディスクからメモリーに送られ、中央演算子が動いた。
小学校６年生の私は、給食の時間に音楽をかける放送部で、同じクラスの
のりこさんと２人で、好きな曲をかけていた。
メインスイッチを入れて、1分間待って、スイッチをＯＮ。真空管のウォーミングアップ。
釘みたいな針（センマイ通しの先っぽ）でＳＰレコードをかけるのだ。
のりこさんは、メモト スズシイ、おとなしい女の子だった。どうしているのかなぁ。
私は、少年王者の歌が好きで、よくかけていたのだ。「またーぁ」と のりこさん。
山川惣治の、少年王者 漫画の主題歌だった。日本版、ターザンだ。
漫画を夢中で読んでいた。
「碧の髪を なびかせて 天にそびえる大木の 枝から枝へ 飛びまわる
少年王者の勇ましさ」。 そんなことが、頭の中を駆け巡っていた。
Ｋさんが、「もう、２０年も探している、少年王者の歌と聞いて、即、歌ったのは
君が初めて、まさか、こんなに近くに知っている人がいるなんて、聞いてよかった。
みどりのかみを、の部分のメロディーが少し違うんだけど。」
「ところで、２番の歌詞がいいのだ、２番知ってる？」
「うーん、？」私の記憶に２番はない。
その日は、それまでで、別れた。
家に帰り、ＷＥＢで検索をした、たくさんのＵＲＬがあった。ところが、漫画は出てくる
けれど、歌は出てこない。キーワードは、｛少年王者｝と｛山川惣治｝の２つだけ。
しかし、あるサイトで、日本蓄音器商会、川田孝子歌、を探し当てた。
そうか、川田孝子が歌っていたのか。５０年も前なので男性ｏｒ女性が歌っていたの
かは、記憶になかった。日本蓄音器商会はコロンビアに名前を変えたとＷＥＢで調べ、
日本コロンビアにメールを送り、楽譜と歌詞を入手できないか尋ねた。1週間後に
返事が来た。「当社では、少年王者の歌は取り扱っていません」と。
カワイのスコアメーカーをいうパソコンソフトで、楽譜を作った。作りながら、自分の
記憶の不確かさを実感した。おかしいと思って変えてみると、そうらしい、しかし前の
メロディーもそれらしく聞こえる。この曲は快活なので、８部＋８部音符にしていた
箇所を、付点８部＋１６部音符に変えるとよさそう。
Ｋさんに、楽譜を郵送した。Ｋさんは、Ｅメールをやっていない。
友人Ｋさんに電話をした。川田孝子が歌ったことは、Ｋさんも記憶にないそうだ。
「ラジオ放送だった、そうだ、当時はＮＨＫしか放送はなかった、ＮＨＫに今度聞いて
みよう」と。
で、ＮＨＫにメールで質問した。やはり、1週間くらい後に、返事が来た。
「楽譜・歌詞は著作権が関係しており、日本音楽著作権協会が管理していますので、
申し訳ございませんがお答えできかねます。あしからずご了承ください」と、つれない
返事だった。ＮＨＫは金の使い込みの不祥事の最中、官庁だなぁ、と思った。
ピン、ときた。日本著作権協会（ＪＡＳＲＡＣ）で、調べてみよう。ＮＨＫがヒントをくれた。
ＪＡＳＲＡＣの検索で、
山川惣治 作詞
海沼 實 作曲
川田孝子 歌
と、判明した。山川惣治は詩の著作権をＪＡＳＲＡＣに委託していない。ＮＨＫは何も
調べずに、一般論の当たり障りのない回答をした。こんな回答なら不要だ。
やってみるものだ、ＮＨＫが著作権というパスワードをくれた。
そうだ、Ｍさんに聞いて見よう。Ｍさんは童謡を中心に九州を本拠として、活躍して
いる男２人のデュエット（アゲイン）で、Ｋさんの紹介で２回ほど関西でのコンサート
に行ったことがある。ＣＤも出しており、聞くとほっとした、暖かい気分にしてくれる。
楽譜とｍｉｄｉをＥメールで送った。
すぐ、返事がきた。Ｍさんは私より５才若いので、漫画も歌も全く知らない、ところが
なんと、なんと、Ｍさんの親父さんが知っていた。２番の歌詞を添えてメールが来た。
親父さんは８５才だそうだ。すごい記憶力。感心、いや感嘆！！！。
その日は少し酒で、ろれつが回らなかったが、Ｋさんと長電話をしたのは当然。
海沼實といえば、里の秋の作曲者。静かな静かな里の秋、・・・・。いい歌だ。
あの歌が、戦争に行った父親の帰りを待ってる母子の歌と知ったのは、１０年くらい
前のこと。思えば、私は終戦の時は２才だったので、小学校の５０人クラスには父親
のいない子が１０人くらいいた。その海沼實が少年王者を作曲していたとは。
みかんの花さく丘、お猿のかごや、・・・ 超有名な作曲家。
ＷＥＢで海沼實を検索した。なんと、海沼實は音羽ゆりかご会の創立者だったのだ。
川田３姉妹（正子、孝子、美智子）も属していた。
開沼實の曲はほとんど川田３姉妹と音羽ゆりかご会が歌ったのだ。
さんだいめ海沼実が現在は音羽ゆりかご会の指導をしていると。
そうだ、あつかましいが音羽ゆりかご会のＨＰに書き込みをした。少年王者の歌を
ぜひもう一度歌いたいので、楽譜と歌詞を教えてもらえないでしょうか と。
さんだんめさんから、すぐに返事が来た。うれしいことに、１、２、３番の歌詞がメール
に添えられていた。１番の歌詞は私の記憶は１００点満点だった。２番はＭさんの
親父さんは１箇所（洩る月かげ は照る月かげ が正しい）を除いて正しかった、９９点。
親父さんに乾杯。
さんだいめは、ＮＨＫのラジオ深夜便の童謡部門を担当しているとのこと。
（次回は２月１８日、午前３時放送）
改めて、音羽ゆりかご会のＨＰを調べてみると、さんだいめ海沼実は３姉妹の３番目
の美智子の子供であった。少年王者の孝子はさんだいめの伯母だった。
月刊ラジオ深夜便、を買った。さんだいめが写真入りで記事が出ている。
プレゼントに、史上最高の歌姫・童謡歌手・川田３姉妹のＣＤ（ＳＰからの復刻版）が
あったので、応募したけど、くじ運のよくない私は、ダメでしょう。
Ｍさんに、海沼實・川田３姉妹・音羽ゆりかご会のことをメールしたら、Ｍさんの親父
さんが早速、ＣＤを購入するとのこと、年金暮らしの私はそのＣＤを聞かせてもらって、
楽譜を完成させることにしよう。
Ｋさんが、ＮＨＫ大阪を訪ねた。わからない、と言っていた担当者も、Ｋさんの熱心さで
１時間３０分付き合って、探してくれたが分からなかった。
情報があったら連絡するということで別れたそうだ。
Ｍさんから、ＣＤが届いた。昼食中だったが、中断でＣＤを何度も聞いた。昔の恋人に
逢った気分で、なぜか涙が出た。川田孝子は、かわいい声だった。
やはり、私の記憶のメロディーは、ちょっとまちがってた。歌詞のつけ方も、
かーーみを で私は、確信してたのですが、
かみーをー が正しい。
ハ長調でなく、変ロ長調だった。
女房が心配して、「食事もしないで どうしたの？」 「いや、なんでもない」、といいながら、
この１ヶ月間の話を女房にしながらの昼食でした。心がはずんだ、ひとときだった。
楽譜が完成した。歌詞は海沼実さんだいめさんからもらい、メロディーは昔のＳＰ
レコードよりの復刻版を聞いて作った。
ついでに、耳コピーでオーケストラ版も作った。
２月１３日にアゲインさんのコンサートが神戸であるので、Ｍさん、Ｋさんと会える。
それにしても、還暦過ぎの３人の男がねぇ、・・・、楽しい時間だった。
2005.2.11
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