海よ
アンドレ・スピール
（堀口大學訳）
海よ、聞かせておくれ、
お前が転がしていた磧のことを････。
お前はいつまでも飽きないか？
お前が砕いて砂にする岩のことを
お前の波のことを、お前の沫のことを
お前の泡のことを、お前の匂いのことを、
お前の露が島に芽生えさせ
お前の風がいじめる松の木のことを。
牛乳のようなお前の夜明けのことを
お前の中に生まれ、殖えて、そうして揺れている
魚の事を、貝のことを、藻のことを、海月のことを、
そうしてお前の中に死んでゆく諸々のことを････。
お前は何時までも飽きないか？
聞かせておくれ、
お前を引き付ける青空のことを
お前の水に水鏡したがる星のことを
お前の波は休みなくその影を崩している
夜明けにお前を逃れ、お前を呼吸し、
お前を引きずる太陽のことを、
夕暮、お前は太陽を自分の臥床に
引き止めておきたいのだが
太陽はいつも逃げてしまう。
聞かせておくれ、磧のことを。
お前はいつまでも飽きないか？
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