父がいる庭
Ⅰ.父が庭にいる歌
津村信夫 作詞
多田武彦 作曲
合唱 ：さだ男声合唱団
（さださんが1人で４パートです）
指揮 ：藤田貞智
父を喪った冬が
あの冬の寒さが
また 私に還ってくる
父の書斎を片づけて 大きな写真を飾った
兄と二人で父の遺物を洋服を分けあったが
ポケットの紛悦(はんかち）はそのままにして置いた
在りし日 好んで植えた椿の幾株があえなくなった
心に空虚な部分がある いつまでも残っている
そう言って話す兄の声に 私ははっとする程だ
父の声だ そっくり父の声が話している
私が驚くと 兄も驚いて 私の顔を見る
木屑と星と枯葉を吹く風音がする
暖炉の中でも鳴っている
燈がともる 言い合わせたように
私達兄弟は庭の方に目をやる
（そうだ いつもこの時刻だった）
あの年の冬の寒さが今 庭の落葉を静かに踏んでくる